Q.もし認知症になってしまったら・・・自分の資産管理、家族に迷惑をかけたくありません

<私、悩んでいます>

すでに年金をもらう年齢となり、とくに健康に不安はありませんが、ひとつ認知症が心配です。すでに夫は他界し、子どもたちも独立し、今は一人暮らし。もし認知症になれば、いろいろな支払いなど、お金の管理ができなくなるかもしれません。家族にも迷惑を掛けたくないのですが、どう備えればいいでしょうか(女性/65歳)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 万が一の前に、資産管理の対応は早めに検討
  • 「成年後見制度」は認知症への備えとして利用可能
  • 認知症から資産を守るさまざまなサービスから、自身に合ったものを選ぼう
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資産管理ができないという認知症リスク

国の推計(※1)によると、国内の認知症高齢者数(65歳以上)は2012年では462万人でしたが、これが2025年には700万人前後に増加するとのこと。割合で見れば、65歳以上の「5人に1人」が認知症を発症することになります。

これだけ増えるとされる認知症ですが、発症した場合の生活リスクは多岐に渡ります。そのひとつが、ご相談者が心配されているとおり、公的年金を含めた預貯金の引き出しや投資商品の売却、不動産の処分など、自身の資産管理が困難になること。ですが、あらかじめ準備をすることで、そうした不安へ対処することができます。

成年後見制度

将来発症するかもしれない認知症にあらかじめ備えておきたい、その場合は「成年後見制度」の活用を検討されてもいいでしょう。成年後見制度とは、後見人(代理人)を付けることで、自分の財産や権利を法的に守ってもらう仕組みですが、当事者の状況によって「任意後見」と「法定後見」に分かれます。ご相談者のようにまだ認知症等を発症せず、本人に判断能力があるうちは、「任意後見」となります。

任意後見は、自ら後見人を選びます。親族の他、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできますが、専門家の場合は費用がかかります。実際に任意後見がスタートするのは、本人(被後見人)の判断能力が低下した後、家庭裁判所に後見人監督(※2)の選任を依頼し、その選任後となります。

後見制度支援預金と後見制度支援信託

成年後見制度によって被後見人の資産を保護・管理する場合には、金融機関が提供する「後見制度支援預金」・「後見制度支援信託」を利用することが考えられます。この2つの商品は、一般的には、通常使用しない大口の資金を「後見制度支援預金」もしくは「後見制度支援信託」としてプールしておき、この中から、日常生活等に必要な金額だけを、家庭裁判所からの指示書に基づいて生活口座に定期的に(またはその都度)移す仕組みとなっています。

後見制度支援預金は銀行のほか、信用金庫、信用組合、農業協同組合等で取り扱われており、後見制度支援信託は信託銀行などで取り扱われていますが、取扱いの有無や、商品内容は金融機関によって異なりますので、詳しくはお取引のある金融機関にお問い合わせください。

このほか、独自の代理人制度や財産管理サービスを提供している銀行もあります。利用の手続きにはある程度の時間もかかりますので、ご自身にあったものを早い時期に検討しておくと安心でしょう。

(※1)「日本における認知症の高齢人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業・九州大学二宮教授)より内閣府が作成

(※2)正しく後見行為が行われているかを監督する。弁護士、司法書士、社会福祉士などがつくことが多い。後見人の配偶者、兄弟姉妹等はなることができない。