Q.50代半ばから確定拠出年金を始めて効果はあるでしょうか?

<私、悩んでいます>

「公的年金や今ある預貯金だけでは、老後は資金的にきびしいのが現状です。定年後は再雇用制度を利用して、65歳までは働く予定ですが、それに加えて、個人型の確定拠出年金を始めたい(勤務先に企業型はないため)と考えています。ただし、すでに今年で55歳。今からでも効果はあるでしょうか? 」(55 歳/会社員)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 50代での加入でも確定拠出年金の効果は期待できる
  • 老後のマネープランに計画的に確定拠出年金を組み入れる
  • 投資商品の比率を徐々に下げ、リスク管理を行う
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加入期間は短いが、税制優遇のメリットは小さくない

老後準備のため、55歳から個人型の確定拠出年金(個人型DC、愛称「iDeCo(イデコ)」)に加入してその効果はあるかどうかという相談ですが、まず知っておくべきは、何歳で加入しようとも、掛け金を拠出できる期間は個人型の場合、60歳までということ。55歳であれば、5年間しかありませんが、それでも、加入することでの一定の効果は期待できると考えていいでしょう。

その理由は、確定拠出年金利用により税金の優遇を確実に受けられ、節税効果があるからです。たとえば、掛け金が全額所得控除になることで得られる節税効果は、55歳加入なら最長で5年間。企業年金のない会社員が、掛け金の上限額である月23,000円を拠出したとすれば、年間で約55,000円の節税(所得税と住民税の合計税率が20%の場合)となり、年末調整や確定申告で還付金となり、手元に戻ってきます。

また、掛け金の運用益(源泉分離課税20.315%)も非課税となります。さらに、積み立てた資金を将来受給するときも、一時金として受給すれば「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」が適用され、税金の優遇が受けられます。

老後資金づくりとして、確定拠出年金を利用せずに貯蓄をしたり、投資をしてもこれらの恩恵は得られません。その点からも、加入期間が短くても加入効果は小さくないと言えるのです。

老後のマネープランを立て、確定拠出年金を効率的に活用したい

50代からの個人型の確定拠出年金に加入する場合、受給できる年齢についても知っておく必要があります。原則60歳になると積み立てた資金の受け取りが可能ですが、そのためには60歳の時点で通算加入等期間が10年以上必要だということです。

相談者は55歳ですから、個人型、企業型ともに今回初めての加入となれば、60歳になる時点でその要件を満たすことができません。このような場合、受給できる年齢が引き上げられます(表参照)。55歳から加入し、通算加入等期間が5年の場合、受給できるのは63歳以降となるわけです。

しかし、実際に受給を開始する年齢は、受給可能年齢から75歳までの間で自由に選べるため、受給可能年齢が引き上げられることを事前にわかったうえでしっかりと老後のマネープランを立てれば、それ自体はデメリットとはなりません。

例えば、相談者の場合、定年後に再雇用で65歳まで働くということを予定しているため、65歳から受給を開始するという選択肢もあります。

また、主に投資商品で増やすことを目的とするなら、資産が目減りしてしまうリスクも当然抱えることになります。株価などの急落で大きく資産を減らしても、運用期間が10年、20年と残っていれば十分に取り戻す時間はありますが、受給開始年齢が近づくとそれも難しいと言わざるを得ません。

したがって、とくに値動きが大きくなりやすい株式投信(主に株式に投資する投資信託)の比率を減らし、安定した債券投信や預貯金の配分を増やしていくというのも、リスク回避のひとつの方法です。

表■老齢給付として年金受給する場合の受給要件

60歳時点での通算加入者等期間(※) 受給可能年齢
10年以上加入 60歳
8年以上〜10年未満 61歳
6年以上〜8年未満 62歳
4年以上〜6年未満 63歳
2年以上〜4年未満 64歳
1ヵ月以上〜2年未満 65歳

(※)個人型および企業型の確定拠出年金における加入者・運用指図者(掛け金を拠出せず運用だけを行う)の期間の合算