Q. 将来、夫が要介護になったらと思うと不安です。どのように備えを?

<私、悩んでいます>

「夫はこれまで大きな病気やケガもなく、病院とは無縁の生活を送ってきました。加入している医療保険の掛け金が無駄と思えるほど、今も元気です。しかし、そんな夫もいつ介護が必要となるかわかりません。そう考えるととても不安です。介護費用はどうやって準備していけばいいでしょうか ?(女性/55歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 公的介護保険が備えのベースになる
  • 介護費用の自己負担額は「1割」「2割」「3割」のいずれか
  • 不足分は貯蓄か民間の介護保険でカバー
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全世帯の1割が要介護者を抱える時代

長寿社会となれば当然、問題となってくるのが介護です。厚生労働省の調査によると、平成29年3月末時点での要介護認定者数は632万人(※)。この数字は、全世帯数の約1割に介護が必要な人がいることを示しています。

さて、まず介護にはどんな費用が発生するでしょうか。主なものとしては介護サービス費、住宅改修費、そして介護用品購入費の3つ。そして、それらに対して、備えのベースとなるのは「公的介護保険」です。
公的介護保険は40歳になった時点で、健康保険の加入者すべてが自動的に被保険者となり、要支援、要介護の認定を受けた場合、介護サービスを受けられるというもの。65歳以上(第1号被保険者)であれば、介護状態となった原因を問わずサービスを利用できますが、40~64歳の被保険者(第2号被保険者)は、認定された16の疾病が原因で介護が必要になった場合に限られます。

要支援、要介護と認定されると、ケアマネージャーと相談し、具体的なケアプランを作成します。
被保険者はそのケアプランに即して、訪問介護や介護福祉施設などでのデイサービス、ショートステイ、あるいは入所による入浴や食事、リハビリ等の生活援助を受けることができます。これら介護サービスにかかった費用は、要介護度ごとに公的介護保険による1カ月の上限が決まっていますが、その範囲内であれば自己負担額は1割、2割、3割(年収等によって異なる)のいずれかで済みます。加えて、福祉用具の購入費は年間10万円、介護のための住宅修繕費は同一住宅に対して1人1回20万円をそれぞれ上限として、その1割〜3割が自己負担額となります(上限を超えた金額については全額自己負担)。

公的介護保険を利用してもかかる介護費用は小さくない

それでも、実際の介護費用負担は、決して小さいものではありません。
公的介護保険の受給額の上限を超えれば、超過分は自己負担となります。

たとえば、厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和2年12月審査分)」によると、要介護3の介護保険受給者の介護サービス費用額は平均月額22万6,400円(表参照)。この全額が介護保険適用の介護サービスであれば、受給限度額内ですから、実際の自己負担額は2万2,640円(1割負担の場合)となります。しかし、保険適用外の費用が含まれていれば、その分、自己負担額は増えます。しかも、一般的に数年間、継続的にかかる費用ですから、家計にとってはけっして小さな負担ではありません。

そういった自己負担額については、貯蓄もしくは民間の介護保険でカバーしていくことになります。
ただし、民間の介護保険で注意したいのは、公的介護保険での介護認定とは別の認定基準を設けているケースがあること。事前に確認しておかないと、保険金の支払に影響が出ることもあります。

(※)令和3年1月分「介護保険事業状況報告(暫定版)」より。要介護(要支援)認定者とは「要介護1~5」および「要支援1~2」と認定された第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳〜64歳)の合計

■公的介護保険の支給限度額と介護サービス、介護予防サービスにおける平均費用額(月額)

要介護(要支援)状態区分 支給限度額(※1) 受給者1人当りの介護サービス、
介護予防サービスにおける平均費用額(※2)
要支援1 5万320円 2万2,200円
要支援2 10万5,310円 3万1,800円
要介護1 16万7,650円 7万4,184円
要介護2 19万7,050円 10万398円
要介護3 27万480円 15万6,289円
要介護4 30万9,380円 19万492円
要介護5 36万2,170円 23万6,498円


(※1)介護保険による区分支給限度基準額(2019年10月以降)
(※2)厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和2年12月審査分)」より。要支援1〜2の受給者は介護予防サービス、要介護1〜5の受給者は介護サービスの費用における平均月額