Q. 大学進学のため奨学金を借りたいが、返せるか不安

<私、悩んでいます>

「大学進学を希望している高校3年です。家庭の事情で大学費用を親に出してもらうことができません。したがって奨学金を利用したいのですが、ちゃんと返すことができるかどうか不安です。もし、できない場合、どうなるのですか?また、そうならないためのポイントはありますか?(女性/18歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 返還が長期間滞ると、ローンの借入ができなくなることも
  • 返還額の減額や返還期限の猶予といった対応も可能
  • 自治体や大学、公益財団法人の「給付型」を狙うのもいい
さらに読む

全体の1割が返還できていない

いまや大学生の2人に1人が奨学金を利用する(※1)時代ですが、同時に、奨学金返還の遅延、滞納は社会問題になりつつあります。日本学生支援機構によると、2019年度末時点で奨学金の未回収額は841億円、要回収額(当該年度中の返還期日到来分)の11.1%に達しています(※2)。

では、実際に返還ができないとどうなるのでしょうか。
督促状が届く、延滞金が課せられるといったことから始まり、長期間延滞が続くと法的措置(申立や強制執行)がとられます。さらに個人信用情報機関へ登録されてしまうと、たとえ返還が終了しても、その後5年間は登録が削除されないため、住宅ローンが組めない、クレジットカードが作れないといった可能性が出てしまうのです。

奨学金は学校卒業後、社会人になってから返還義務を負うことになりますが、さまざまな事情によって返還が難しくなる可能性もあります。その場合、多くの奨学金は、返還方法の変更等に応じます。

たとえば、日本学生支援機構では、奨学生本人に返還困難な事情がある場合に、減額返還や返還期限の猶予を受け付けています。減額返還は、1回当たりの返還額を2分の1もしくは3分の1に減額する措置で、それに応じ返還期間が延長されます(※2)。猶予の期間制限は、基本的に10年を限度(※3)に一定期間返還を停止するという措置(一般猶予)で、それに応じて返還終了年月も延期されます。また、いずれの措置も1年ごとに申請する必要があります。

また、奨学金は返還義務のある「貸与型」が一般的ですが、それとは別に「給付型」もあります。つまりは、「返さなくていい」奨学金です。日本学生支援機構の場合、高校生と大学生を対象に、給付型奨学金の新制度が2020年にスタートしました。住民税非課税世帯かそれに準ずる世帯の学生が対象ですが、奨学金の支給に加え、授業料・入学金の免除、減額も受けられます。他にも、独自の給付型奨学金を実施する大学や高校、自治体、民間企業の公益財団法人があります。

現在高校生でこれから利用しようと考えているならば、まずは在籍の高校の奨学金相談窓口で早めに相談をしましょう。これまでの事例や無理のない借入額の考え方などのアドバイスを受けることで奨学金の不安も解消されるはずです。合わせて、各募集要項など、事前の情報収集をしっかりしておくことも大切です。

(※1)日本学生支援機構「平成30年度学生活調査」より。同年度の奨学金受給者の割合は大学(昼間部)が47.5%、短期大学(昼間部)が55.2%。
(※2)日本学生支援機構「返還金の回収状況及び令和元年度業務実績の評価について」より。
(※3)ただし、災害、傷病、生活保護受給中、産休・育休中、一部の大学校在学中、海外派遣の場合は10年の制限はない。