Q.投資初心者も「ポートフォリオ」を考える必要はありますか?

<私、悩んでいます>

将来を考えると、やはり貯蓄だけでは不安だと思い、今後、少しずつ投資をしたいと考えています。投資で大事なことは「ポートフォリオを組むこと」だと聞きましたが、その内容がよく理解できません。私のような初心者でもポートフォリオを考える必要はあるのでしょうか?(男性/26歳)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • ポートフォリオとは分散投資を目的とした金融資産の組み合わせ
  • 分散投資は商品が偏ることによるリスクを避ける効果がある
  • ポートフォリオは定期的にリバランスすることが重要
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自分に合ったポートフォリオは運用に不可欠

「ポートフォリオ」を理解するには、まず複数の投資先に資産を分ける「分散投資」の必要性を知っておかなくてはなりません。分散投資には「資産の分散」や「時間の分散」のほか、「地域の分散」があります。

投資には必ずリスクがともないます。それを抑えることが分散投資の目的です。資産の分散であれば、同じ要因に対して値動きが連動するものに偏らないことで、大きな市場の変動で資産を大きく減らすことを避けることができます。例えば、一般的な傾向として、株式と債券は逆の値動きをします。株式価格が上昇傾向なら、債券価格は下がる。逆に債券価格が上がれば、株式は下降傾向になるということです。

GPIFによる基本ポートフォリオで定める資産構成割合

「安全かつ効率的な運用」という観点から組まれたポートフォリオ(年金積立金管理運用独立行政法人
・公式サイトより)

「ポートフォリオ」とは、この分散投資を活用するための、金融資産の組み合わせです。では、実際にどう組み合わせているのか。その具体例として、私たちの年金を増やすことを目的に、実に193兆円以上を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の資産構成割合を見てみましょう。2021年6月時点では、国内株式24.49%、国内債券25.39%、外国株式25.41%、外国債券24.72%。株式と債権、国内と国外を組み合わせて、ほぼ均等に資産を分散していることがわかります。GPIFでは2020年4月から5年間、上記の資産がすべて25%ずつという基本ポートフォリオを策定し、時期により数%の乖離はあるものの、基本的にはこの割合が保たれています。

ポートフォリオを組むことで分散投資を活用した資産運用になるため、初心者でも意識することは重要ですが、その割合は一様ではなく、人によってそれぞれです。そもそも貯蓄に対して、どの程度、投資に回すことができるか、言い換えれば、リスク許容度は、その人の家計やライフプランによって当然、差があります。今後、教育費や住宅資金を貯める必要があれば、ほぼリスクは取れないでしょう。あるいは、子育ても終わり、資金的に余裕があれば、ある程度のリスクは許容できるかもしれません。自分の、あるいは各世帯の資産状況や今後のライフプラン、運用の目的に合わせてポートフォリオを組むことが重要なのです。

リバランスにより収益率アップも期待できる

「リスクを抑える」という意味で、GPIFでも、投資ビギナーでもポートフォリオの重要性は同じです。しかし、一度組んだら安心というわけではありません。ポートフォリオは、状況に応じて「リバランス=資産配分の再調整」を行うことがとても重要になってきます。

投資商品は、日々基準価格が変動します。各金融商品の資産価値が変動すれば、資産配分についても当初の割合から大きくズレてしまうことも考えられます。そのため、配分比率が減ったものを買い増す一方、増えたものは売却していくことで、あらかじめ決めた割合に戻していく。それがリバランスです。例えば、所有する商品のうち、外国株式に投資する投資信託が大きく価格が上がって初期の割合よりも大きくなっていたら、その一部を売却する。また、国内株式に投資する投資信託の価格が下がって初期の割合よりも小さくなっていたら、それを買い増す、といった具合です。リバランスを行う期間としては、短期であれば3カ月ごと、長くとも1年ごとには見直したいところ。また、期間にかかわらず、相場局面が大きく変わった場合も同様です。

資産配分が変わることで、いつの間にか高いリスクを取っている。それを避け、リスクを想定内に戻すことがリバランスの大きな目的ですが、それ以外にも期待できる効果があります。それが、運用による収益率のアップです。値上がりした商品を売却し、割安となった商品を買う。これは、運用によって資産を増やす重要なポイントですが、値動きする商品の売買のタイミングを的確にとらえることは、実は経験者でも難しいことです。リバランスは、それを機械的に行うことができるという点で、とても大切な作業だと言えるのです。
ただし、リバランスを行うことが常にプラスに働くとは限らず、例えば特定の商品が値上がりまたは値下がりを続ける場合は、マイナスに働くこともあります。
また、時間の経過とともに、資産運用の目的や自分がどの程度リスクを受け入れられるか等、自身の環境も変化していきます。そうした時は、当初のポートフォリオ構成を適切に見直すこと(リアロケーション)も必要となりますので、覚えておきましょう。