Q. 住宅ローンの繰り上げ返済、効果的に行うには?

<私、悩んでいます>

「3年前に一戸建てを購入しました。価格は2,900万円。借り入れたのは、35年返済で2,500万です。当初は返済が負担に感じましたが、昨年あたりから収入もアップし、貯蓄も少しずつ貯まり始めました。そこで、繰り上げ返済をしたいと考えているのですが、どの時期にどのくらい行えば、より効果的なのでしょうか?(男性/33歳)」

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 繰り上げ返済は額が大きいほど、また時期が早いほど効果は高い
  • 支払利息を減らしたい、完済を早めたいなら「期間短縮型」
  • 毎月の支払いを軽減したいなら「返済額軽減型」
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繰り上げ返済は目的に応じて2タイプあり

繰り上げ返済は、毎月の返済額とは別に、まとまった額を返済する方法です。返済はすべて元本のみに充てられるため(元金返済の前倒し)、その分の支払い利息が消え、総支払額を効率的に減らすことができます。基本的にはいつでも行えますが、1回の最低返済額(1円~100万円)と手数料(無料~数万円)は、金融機関、ローンの種類によって様々です。

繰り上げ返済には、返済期間を短縮する「期間短縮型」と毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」の2タイプがあります。ともに将来の支払い利息は減りますが、よりその効果が高いのは「期間短縮型」です。一般に「繰り上げ返済はとても得」というイメージがありますが、それもこちらを指していると言っていいでしょう。
また、どちらのタイプを選択するにしても、返済額がより大きく、そして実施時期がより早いほど効果も大きいことになります。

繰り上げ返済に入れたお金は「働き者」

その効果の違いを表で示してみました。表に記したローン内容の場合、返済開始から3年後に「期間短縮型」で100万円を繰り上げ返済すると、軽減された支払利息は115万6,892円。つまり、100万円は2倍以上も「働いてくれた」ことになります。しかし、その恩恵を実感できるのはローンが完済する32年後です。金利変動がある場合を除けば、毎月の返済額はずっと現状のままだからです。
対して、同様の繰り上げ返済を「返済額軽減型」を行うと、返済期間は短縮されず、軽減される支払利息は45万3,942円と「期間短縮型」の半分以下。しかし、毎月の返済額が3,785円、年間では約4万5,000円が軽減されます。

住宅ローンを返済しながら貯蓄もでき、余裕資金としてまとまった貯蓄もあるなら、期間短縮型の繰り上げ返済は十二分に効果を発揮します。長期ローンを組んだため、その完済を早めたいという場合も効果的です。一方、毎月の貯蓄もままならない、少しでも家計支出を減らしたいという状況ならば、返済額軽減型を選択した方が家計の健全化につながると言えるでしょう。

繰り上げ返済の「期間短縮型」と「返済額軽減型」の違い

[住宅ローンの諸条件]

  • 借入額2,500万円、返済期間35年、固定金利、金利2.5%
  • 毎月返済額8万9,373円(ボーナス払いなし)

3年後に「100万円」を繰り上げ返済した場合

返済内容 期間短縮型 返済額軽減型
毎月返済額 8万9,373円(変わらず) 8万5,588円(3,785円軽減)
残り返済期間 30年(2年短縮) 32年(変わらず)
将来の支払利息軽減額 115万6,892円 45万3,924円

5年後に「300万円」を繰り上げ返済した場合

返済内容 期間短縮型 返済額軽減型
毎月返済額 8万9,373円(変わらず) 7万7,520円(1万1,853円軽減)
残り返済期間 24年6ヵ月(5年6カ月短縮) 30年(変わらず)
将来の支払利息軽減額 291万2,654円 126万7,410円

(※)期間短縮型の場合、繰り上げ返済額は月単位で計算されるため、実際の返済額は若干前後する