気になるのは、変動金利型住宅ローンの金利上昇リスクはあるのかどうかですが、もちろん、可能性はあります。ただし、固定金利が引き上げられたからといって、連動して必ず変動金利も上昇するわけではありません。
また、変動金利は、その仕組みとして半年に一度、金利が見直されます。しかし、ローンの利用者からすれば、半年ごとに返済額が変わってしまっては、返済計画が立てにくくなり、家計管理も大変です。
そこで、金利タイプが変動金利で、かつ元利均等返済方式で借りている場合、金利が上がっても5年間は返済額が変わらない、また6年目から上がっても前回支払額の125%以内に抑えるというルールがあります。ただし、これによって本来上昇した金利分の支払いが免れられるわけではありません。実際は、返済額に占める元本の割合を下げることで毎月の返済額が調整されているだけで、金利が上昇した分、総返済額は増えることになります。それでも、毎月の返済額が抑えられるので、金利上昇に備える時間はあるということです。
では、ご相談者のように、すでに変動金利で住宅ローンを借りている人は、具体的にどう備えればよいでしょうか。
まずは、将来の返済額上昇に備え、たとえ少額でも毎月の貯蓄額を増やしていくことが、地道ではありますが有効です。すでに住宅ローンを抱え、物価高もあり、貯蓄ペースを上げることは簡単ではないかもしれませんが、逆にこれをきっかけのひとつとして、家計を見直してみてはいかがでしょうか。
貯蓄に余裕があるなら、繰上返済を行うのも効果的。期間短縮型を選択して完済時期をより早めることは、金利上昇リスクへの防衛策となります。まとまった貯蓄がなくても、最近は繰上返済金額に制限を設けず、手数料は無料という金融機関も増えています。そうであれば、たとえばボーナス時に毎回数万円繰上返済を行うといった方法でも、継続することで高い効果が期待できます。
一方、固定金利への借換えという手段については慎重に判断した方がよいでしょう。借換えを行うと、金融機関で新たに住宅ローンを組むことになりますから、契約時に発生する諸費用(事務手数料、税金、司法書士報酬など)が発生します。費用額の目安はローン残高の3〜5%程度。合わせて、変動金利より固定金利の方が一般的に高いため、毎月の返済額もアップします。それも含めたコストアップが将来の金利上昇の備えとして見合うかどうかは、十分に検討する必要があります。