Q.老後資金が心許ないのですが、自宅を有効活用できますか?

<私、悩んでいます>

「老後を迎えるにあたり、老後資金が心配です。退職金については多少出ますが、それでも貯蓄と合わせて、用意できる老後資金は1500万円程度。定年後もできるだけ働くつもりではいますが、合わせて、自宅を活用できないかと考えています。とは言え、売却して賃貸住宅に移り住むというのも、高齢になればなるほど不安です。上手に自宅活用の方法があれば、アドバイスをお願いします」(男性/58歳)

ファイナンシャル・プランナーからのアドバイス

  • 自宅を遺す必要がなければ「リバースモーゲージ」の検討を
  • 思い切って売却し、より安価な自宅を購入する方法も
  • 自宅を手放したくないなら「借り上げ制度」
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借入金の返済は死後、自宅売却で

老後資金の調達に自宅を上手に活用したいという場合、例えば、銀行や信用金庫が取り扱う「リバースモーゲージ」があります。
簡単に言えば、自宅を担保に老後資金を借りるというものですが、大きな特徴は、死後に遺族が自宅を売却して一括返済するという点(返済額を超える売却額分は相続される)。自宅を子どもなどに遺さなくていいということが前提ですが、住み続けながら、自宅を現金化できるため、ここ数年、その利用者は増加しています。

借入れ限度額は金融機関によって異なりますが、目安としては土地・家屋の評価額の50%〜80%。必要なときに限度額の範囲内で何度でも引き出して使うことができ、その際、面倒な手間も要りません。
以前は、評価額の高額な物件に限られていましたが、最近は担保評価1000万円以上と利用しやすくなりました。一戸建てだけでなく、マンションでも利用可能です。

注意点として、まずは長生きリスクがあります。想定以上に長生きすれば、借り入れた資金を使い切り、途中で老後資金が不足してしまう恐れも。無計画に使わないことが重要でしょう。
また、利息は変動金利が一般的。途中、金利が上昇すれば、利息負担は重くなります。さらに、地価が大幅に下がれば、借入残高より担保評価額が低くなる「担保割れ」になることもあり、その場合、差額分を返済しなくてはなりません。借入額を抑え気味にするといったことで、事前に対処しておくことも大切です。

資金は借りず、「住み替え」「借り上げ」という選択肢も

リバースモーゲージ以外の方法としては、住み替えがあります。自宅を売却して、その資金で新たに自宅を購入し、残りの資金を老後の生活に充てるというもの。
たとえば、子供たちがすでに独立して、広い家を持て余しているという場合、売却して、中古で割安な小型マンションを購入する。あるいは、都心から地方に移り住むという選択肢もあるでしょう。固定資産税も下がるため、その分を老後資金に回すことができます。

また、自宅を子供たちに遺したいというなら、「移住・住み替え支援機構(JTI)」が実施する「マイホーム借り上げ制度」を検討してもいいでしょう。対象は50歳以上で、借り上げ期間は終身か3年ごとのいずれかを選択(後者であれば自宅に戻り住むことも可能)。
家賃は周辺相場より10〜20%低めに設定されますが、仮に空き家になっても最低保障賃料(査定賃料下限の85%が目安)が支払われます。家賃管理や賃借人との対応はすべてJTIが行うため、貸す側としてのわずらしさもありません。
老後資金を捻出するためには、得られる家賃収入より低い家賃の住宅に移り住むことが条件になりますが、それが可能なら、自宅を手放すことなく、老後資金の上積みが期待できます。

ともあれ、自宅の活用は、自分たち老後のライフスタイルと大きく関わってきます。遺族となる子供たちとも十分話し合い、検討を重ねることが大切でしょう。